高血圧は内科の外来で、もっとも多い病気です。高血圧は40歳代から5人に1人 と急増し始め、60歳代になると実に半分近くのの人が高血圧であるといわれていま す。 現在の人口から計算すると高血圧の患者さんは全国で約2000万人を越えると 推定されます。 「私の身体は自分が一番よくわかっているから」、「何も自覚症状が ないから大丈夫」と思っておられる方が多いようですが、よっぽど血圧が高くならな ければ自覚症状が無いことの方が多いのです。 また診察室で話をしていますと、高血 圧に関して案外誤った思いこみをされていたりされます。 また聞きたいことがあって もなかなか医師には尋ねにくいことも多いようです。 そこで日常外来でよく聞かれる 質問について簡単にまとめてみました。 あなたの常識は正しいか確かめて下さい。 Q 高血圧と言われました。何ともないんですがほっておいてよいでしょうか
このた め気が付かずに治療していなかったり、あるいは高くても「なにも症状がないから大 丈夫」と思っておられる方が有ります。 しかし高血圧は別名「静かな殺し屋」と呼ば れています。 これは高血圧は自覚症状が出ないことが多く、本人が気付かないうちに 体を悪くしてしまうということです。
その後全く 無治療でいると、平均の生存期間は約20年です。 中には無治療で平均寿命より長く 生きる幸運な人もいますが、多くの人は高血圧のない人に比べて15年から20年早 く合併症により死亡します。 放置しておくと動脈硬化が人より進みやすくなります。 また普通より高い圧力で血液を全身に送らねばならないため心臓に負担がかかり、 放っておくと心不全を起こしたりします。 さらに動脈硬化が進むと、脳卒中や心筋梗 塞といった重大な病気も起こしやすくなります。
一度診察室の血圧計をご覧になって下さい。 中に水 銀が入っているのが見えます。 血圧は収縮期血圧と拡張期血圧の二つがあります。 よ く上の血圧といわれているのが収縮期血圧、下の血圧と言われているのが拡張期血圧 のことです。 高血圧と正常の境目ぐらいの血圧の方もおられます。 このような場合、 一回の血圧測定では高血圧とも正常とも診断できないことも多いのです。 高血圧と言 うほどでもないが血圧が高めと言われた方は何度か時間を変えて測って下さい。 一般 に上が160以上、下が95以上の時には高血圧があると診断しています。
高血圧は今のところ少数例を除いては原因は不 明です。 このため高血圧を元から治してしまう薬と言うものは現在のところありませ ん。 しかし現在優秀な薬がたくさんでてきていますので、高血圧のコントロールは出 来ます。 安心して下さい。要は治さなくても薬を使ったり、日常生活で気をつけて血 圧を下げてやればよいということです。
しかし血圧が一年以上安定して いて他に疾患がなければ、減量して行くことも可能な場合があります(全体の患者さ んの一割程度です)。 降圧剤は自分で勝手に中断せず、やめたい場合には遠慮なく医 師に御相談下さい。 自分で勝手にやめられると急に血圧が上がったりして危険です。 また血圧のコントロールが不十分になっても医師は薬は飲んでおられるものとして治 療にあたりますので、さらに血圧を下げる薬を追加で処方してしまうことになりかね ません。 繰り返しになりますが高血圧は無症状のことが多い病気です。 自分の体の調 子だけで判断して薬を飲んだり飲まなかったりするのはやめましょう。 必ず血圧を測 定しましょう。 もし自分の飲んでおられる薬に疑問や不安があったら遠慮せず聞いて 下さい。
薬を飲むにあたって心配 なのは副作用のことだと思います。 何分長期にわたって服用するのですから副作用が 気になるのも当然です。 降圧剤に副作用が無いというと言い過ぎになりますが、命に 関わるような副作用は非常に稀です。 ほとんどの患者さんにおいては血圧を下げる薬 を飲むことで得られる効果の方が、副作用を恐れて薬を飲まずに得られる安全よりも 遙かに大きいのです。 今の世の中で「電気は感電するから使わない」と言う方はほと んど居られないと思います。 電気は使い方次第で感電することは事実です。 しかし電 気は日常生活においては欠かすことができない存在です。 降圧剤もこれと同様で、高 血圧の患者さんには必要な存在です。 副作用が気になる方はどうぞ遠慮なく医師にお 尋ね下さい。
降圧剤を飲み始めてからしばらくは血圧 が下がりだしてきます。 この血圧は今まで体が慣れてきた血圧よりも低いため、しば らくの間体が馴染むのに時間が要ります。 医学的にはっきりしたことはわかっていま せんがホルモンや自律神経などの調節機構が微妙に影響しているのでしょう。 そのま ま服薬を続けていると普通は2〜3週間以内に体調は元の状態に戻ります。 しかし我 慢は禁物です。おかしいなと思ったらどうぞ医師や薬剤師に御相談下さい。 | |