![]() | |
まず最初に覚えていただきたいのは糖尿病は治る病気ではありません。ですから 一度糖尿病になればこの病気は一生つきまといます。その意味では厄介な病気です。 しかし糖尿病はコントロールする事は出来ます。糖尿病は全国で600万人いると推 定されている極めてありふれた病気です。誰がなってもおかしくはありません。そこ で重要なのは糖尿病に対する正しい知識を持ち、賢く対処する事です。以下によく尋 ねられる質問を上げてみました。参考にして下さい。
違います。糖尿病はインシュリンという血糖を下げるホルモンの働きがうまく出来ずに起こる病気です。 甘いものやお菓子を食べ過ぎたからなるものではありません。 極端な話、糖尿病ではカロリーのあるものを食べれば、何を食べても血糖は上が ります。 たとえばお饅頭やアイスクリームを食べなくても、ご飯や肉類、パンや牛乳 といった普通の食物も体内で分解されて最終的には血糖を上げます。 ですから何よりも大切なことは甘いものを食べないことよりも、食事の全体の量に気をつけて腹八分目にすることです。 どれくらい食べたらよいかは説明します。 糖尿病の治療の基本は運動療法、食事療法、そして薬物療法の3つです。 糖尿病と診断されても運動をしてきちんと食事を食べ過ぎなければ、必ずしも薬物を必要としない軽症の糖尿病の患者さんもおられれば、インシュリンの注射を必要とする患者さんまで様々な患者さんがおられます。 そこで必要なことは、糖尿病をコントロールして正常な人と同じ様な日常生活を送ることです。例えていえば、髭を剃るのは厄介な事ですが慣れてしまえば面倒なことはありません。 糖尿病の治療薬もその様に考えていただければと思います。 糖尿病は放置しておくと色々な病気の原因になります。たとえば動脈硬化による 心筋梗塞や脳梗塞、腎不全や視力障害など様々な病気を合併します。それを防ぐに は、そうなる前に予防していくことが大切です。 また軽症の糖尿病患者さんの中には、運動療法や食事療法で薬が要らなくなる 人もありますのでなるべく初期から治療を開始することが大切です。 糖尿病の治療を始める時に体重を計ります。標準体重は身長(メートル)×身長(メートル)×22です。たとえば身長が150センチの人ならば1.5メートル×1.5メートル×22=49.5kgになります。自分の標準体重を一度計算してみて下さい。 質問のなかなか体重が落ちないということですがいくつかの事が考えられますのでよ く考えて下さい。 まず最初は自分の思っているのより色々と食べていることです。食 事のあとのデザート、おやつ、寝る前の一杯その他色々のものがありますが、水以外 のものは体の中に入れば太ると考えて頂いて差し支えありません。 たとえば缶コー ヒーを一本飲むと約100キロカロリー、ご飯にして半杯ぐらいのカロリーを取るこ とになります。これが積み重なれば自分ではあまり食べたつもりはないのに太ってし まうということになります。 第二に適度な運動はされているでしょうか。ある患者さんに運動されておられま すかと訊いたら毎日買い物に自転車に乗っていっていますと答えられました。 そこで一緒にどれくらいのカロリーを消費されているか計算したところわずかに40キロカロリー、卵半分ぐらいの消費カロリーでした。(ちなみに普通の人が一日に消費するカロリーは1500キロカロリー前後です。) これですと帰ってジュースを一杯飲めばかえってお釣りが出てしまい、肥満の原因になります。因みにビールを一本飲んだのを運動で消費しようとすると45分間歩かなければなりません。皆さんが思っておられるよりもたくさんの運動をしなければ体重は落ちません。ここら辺にも誤解があるようです。 なぜ糖尿病になるか?これには現在の所正確な答えは出来ません。 多分遺伝的な要因に加えて肥満や食生活、運動の習慣様々な要因が加わって糖尿病になるとしか答えられません。 多分まだ現代の医学ではわかっていない、未知の原因もあると思われます。 成人で発症するタイプの糖尿病は遺伝的な要因があるとされていますが、家族に糖尿病を患っておられなくても発病することも珍しくはありません。 決して糖尿病はご先祖様の因果でなるのではありませんので、糖尿病を治すのに、宗教に走ったり壺を買うのは止めて下さい。 今、自分のピークフロー値がベストピークフロー値の何%になっているかを知る方が個々の管理の指標になります。 糖尿病はある日突然なるものではありませんが、かといってあなたが絶対になら ないという病気でもありません。 糖尿病は軽症のうちはほとんど自覚症状はなく、徐々に忍び寄って来るものなのです。職場検診やたまたま診療所で血糖を計ったら、高かったということのほうが多いでしょう。それだけ糖尿病には自覚症状がないぶん、ある日『あなたは糖尿病です』と医者から宣告されても、なんだか納得しかねるのです。 糖尿病の診断は血糖、すなわち血液の中の糖分が多いか少ないかによって診断します。 正確に診断するためには、ブドウ糖を飲んで採血する糖負荷試験と呼ばれる検査をすることもあります。 血糖が高ければ糖尿病、低ければ正常人。血糖以外に診断基準はありませんから症状だけで決めることはありません。 糖尿病は長期に渡る治療を必要とします。 このため高名な先生であってもあまり遠方や待ち時間の長い先生にかかるのはお勧めしません。 出来れば近くの内科医で充分な説明をしてくれるところで、気の合う医師にかかられるのがよいと思います。 また糖尿病は全身性の疾患なので、必要に応じ眼科や症状に応じた他の科に紹介してくれる病院、医院がよいと思います。 待ち時間の長い病院に長期にわたって通うことは思った以上に大変です。 特に軽症の糖尿病の場合、内科医院にかかっておられればまず何処の医院でも問題はないと思います。 患者さんには医院病院を選ぶ権利があります。 この医師なら大丈夫だろうという波長の合う、医師に気長にかかって下さい。 アルコールは1gにつき7キロカロリーのエネルギー量を持っています。 しかしアルコールは無駄の多いエネルギー源で体内ではほとんど利用されません。 ではアルコールをいくら飲んでもよいかというとそうではありません。原則的には糖尿病患者さんにはアルコールは禁止です。 なぜかというとまず1番目にはアルコール分を飲むと食欲が出て、食事療法がおろそかになってしまうことが挙げられます。 また2番目にはアルコールを大量に飲むと低血糖を起こしやすくなります。 薬が効きやすくなるわけです。アルコールは人間関係の潤滑油ですから完全に止めるのはなかなか難しいめんもあります。 しかしアルコールのために栄養のバランスが崩れたり、血糖のコントロールが悪くなるのはいただけません。 血糖のコントロールがついてなおかつ重大な合併症がない場合には量を過ごさなければ多少の飲酒は(ビール1本 酒一合 ウイスキーシングル3杯程度)かまいません。 ただし血管病変が進んでいる人、飲み出すと止まらなくなる方は止めて下さい。 そのような考え方は誤りです。 糖尿病で自覚症状が出るのはよほど血糖が高くなって、正常の3倍から5倍以上になった時です。 しかし自覚症状がないからといって病気が進んでないわけではありません。 糖尿病の合併症として知っておいて頂きたいのには3つあります。 一つ目が網膜症といって、視力が損なわれてしまうことです。 網膜とは目の奥にあってカメラでいうとフイルムの部分にあたります。 ここを栄養している血管が動脈硬化を起こし、出血したりつまってしまった為にひどい場合には失明に至ります。 ちなみに成人で中途失明の一番の原因は糖尿病です。 二番目には腎臓が悪くなります。 糖尿病の患者さんの診察をしているときに採血をして血糖を調べる他に検尿もしていますが尿の中に蛋白が降りていないかも調べています。 腎臓が悪くなってくると尿中に蛋白が出てきて、段々と腎機能が落ちてきます。 ついには腎不全で透析というのが最悪のパターンです。 このような事態を防ぐためにも血糖は十分にコントロールしましょう。 3番目が 神経症です。これは頭がおかしくなるのではなく、手足にいっている末梢神経がやられて、しびれ感や感覚の低下が起こります。 また自律神経がやられると立ちくらみや下痢、便秘、おしっこがうまく出ないなどの症状が出ます。これらの合併症は自覚症状が出ないくらいのの血糖の高さでも進行します。 残念ながら、このような慢性に血糖が高く保たれた結果出てくる合併症は、元のよ うにはなかなか治りにくいのが現状です。 予防こそが最大の治療です。ですから自覚症状が出るほどひどくなるまでほっておかずに、早めに治療を始めることをお勧めします。 確かに糖尿病は厄介な合併症を引き起こしたりする事がありますし、重症化すれ ば大変な病気です。 一方でコントロールさえよければ全く普通の人と同じ生活を送れます。 食事の制限があること、運動しなければならないこと、必要に応じ薬剤を使う ことこの3つを守っていれば恐れることはありません。 残念ながら市販されている健康食品では糖尿病はよくなりません。 また今のところ糖尿病が完治する薬もありません。 身も蓋もない言い方かもしれませんがこれが真実です。 せっかく治療を始めたのにこのような民間療法に切り替えられて糖尿病のコ ントロールが悪くなってしまう患者さんがおられるのは残念な事です またこれらの 薬品や健康食品は値段も高く、患者さんの不安心理をついた商品です。 医師も皆さん の病気が治るように色々な薬を探し求めています。 しかし現在の所、このような薬は ありません。 私の体験談というように個人のよくなったという体験談はのっています が、投与した全員が良くなったのでしょうか。 投与した内の何%が良くなったのか、 未だにこれが書いてある健康食品の宣伝を見たことがありません。 広告に踊らされる ことなく賢い患者になりましょう。 | |
![]() |